ナカ故事

生きる教訓...

地学受験で京大に受かった話 前編

Question

高校二年生の理系です。理科の選択科目で悩んでいます。私の高校の理系コースでは、一年で化学基礎と生物基礎を履修し、二年で化学と物理基礎を履修します。三年生では物理と生物のいずれかを選択しなければなりません。今現在、物理基礎は何とかついていけている状況で、物理となると難しくて挫折しないか心配です。また、暗記が苦手なので、生物を選択したとしても不安が残ります。国公立大学の理系を志望していて、高校は地元では一番の高校に通っています。成績は中の上くらいです。化学以外の残りの二科目、どちらも不安な要素が残っていて、決めきれません。どうしたらよいかアドバイスよろしくお願いします。

Best Answer

地学を選択しましょう(*^^*)

 

 私の大学受験時の選択科目は「物理・地学」でした。地学は参考書・問題集が少ないと言われ敬遠されていますが、誰だって興味と5千円さえあれば地学で受験することは難しくありません。入り口は狭そうに見える地学ですが、一度勉強してしまえば、化学や物理よりも圧倒的に点が取りやすく、ほかの受験生に大きく差をつけることができる科目になります。私は好きが高じて地学を選択してしまい、いばらの道を歩くことを覚悟していたのですが、結果として、地学を選択したおかげで相当、楽をすることができました。今回は、私がどうして地学を選択して受験するに至ったのかについて書きます。

ターニングポイント1:生物が好きじゃなかったので、地学基礎を選択

 高校一年、まだ理系か文系かすらはっきりしていなかったころ、当時の三年生に、地学選択で東大を目指されていた、学内ではかなり有名な方がいました。私はその時初めて、世の中には地学を選択して大学受験する人がいて、かなり希少であることを知りました。その方との面識はなかったですが、同じ高校の先輩で、実際に地学で受験された方がいたことを知っていたのは、のちの私の選択の大きな後押しになったと思います。

 高校二年のコース選択では、文理コースに進み、選択科目(日本史か化学)で化学を選択しました。二年に進級した時点では、自分はおそらく物理と化学で受験をするのだろうなと思っていました。化学の問題集も買って、理論化学の分野はかなり真面目に勉強していました。私の高校には、理コースというのもあり、私の所属していた文理コースとの違いは、文理コースの地学基礎分の二単位が生物になっているところでした。生物にあまり面白さを感じられていなかった私は、多くの理系志望が、どうせ文転するくせに、「高2のうちに数IIIまで進められる」という、定期テストの負担がふえるだけで、ほぼメリットのない謎のカリキュラムに魅力を感じたか、理系アピールがしたいがために理コースを選択するのを横目に、前々から興味のあった地学基礎を学べる文理コースを選択したのでした。

 地学基礎の授業は実に面白かったです。学んだことが身近な現象につながってくるのが、とても良かった。その点で、地学は手に触れられる学問と言えるでしょう。

 授業についていけるように、それまであまりした記憶のない予習復習をしていました。学校から配られたセミナー地学基礎を授業と並行して解き進めていました。これは私見ですが、地学の教員はユニークな方が多いです。マイナーな地学という科目を選択するだけの覚悟がある人はなにか人を惹きつける魅力があるのかもしれません(私含め)。

ターニングポイント2:目指せ地学オリンピック

 地学オリンピックの存在を知ったのはいつか、明確な記憶はないですが、本選出場を目指して具体的に行動し始めたのは高2の10月ころだと思います。高校3年次の選択科目の説明の紙の地学の欄に何故か「地学オリンピック本選に出場した先輩もいます」(高3でしか地学を選択できないが、高3は本選には進めない)と書いてあり、その時すでに地学基礎にメロメロだった私は、自分も行けるかも?ととりあえず予選を受けてみようと思ったのでした。

 自分も行けるかも?と思ったのは、私が自信過剰だったからではありません。ほかの科学オリンピック(物理や化学)などは、高校レベルの知識の高度な応用力が問われるらしいのですが、地学オリンピックは、予選はなんと「地学基礎」の内容のみから出題されるという、マイナー科目らしく受験者を増やすための工夫をしていたのです。(実際はしばしば地学基礎の範囲外の内容も出題されているような気がしますが...)

 地学オリンピック予選を受験すると決めてから、まだ勉強していない範囲の教科書を読みこみ、セミナー地学をすべて解き終わらせました。その次はセンター試験の過去問(地学+地学基礎)を購入し、過去11年分のセンター試験「地学基礎」を解きました。

「簡単すぎる・・・」

 基礎科目ですし難しい問題はなかなか出さないと思いますが、どの問題も教科書を一読すれば容易に答えのわかるものばかりで拍子抜けしました。いよいよ調子に乗ってきた私は地学オリンピックの予選の問題に手を付けることにしました。地学オリンピックとなると、ただの暗記では太刀打ちできないと思っていましたが、難易度はセンターの少し上くらいで、本選出場ラインをぎりぎりかすめる程度の成績は取ることができていました。本選出場が見えてきた私はより一層地学の勉強に励みました。

 そして12月の予選、すごく風が強くて寒かった日、一人千葉大学に赴き予選を受けました。どうやら千葉東高校は集団で受験していたのか、同じような制服の人がたくさんいて、そのほかはとても頭よさそうな感じを出していた眼鏡君が数人いて、なぜかスーツで参戦した私はやや浮いていたように感じました。

 問題の様子も過去問と大して変わらず、試験時間2時間をいっぱいに使って解き切りました。自己採点は470/550で、例年なら余裕で通過のようでしたが、どうやら問題が易化しているのと、強者がたくさんいたようで、度数分布をみる限り、本選出場ラインの全国上位60名に入れているかは微妙でした。だから、自宅に届いた結果を開封し、本選出場の知らせを読んだときは跳んで喜びました。

 その後届いた参加者の名簿を見ると、なんと千葉県からの参加者は私のみでした。どうやら、あの大勢いた千葉東の生徒のうち誰一人として予選を突破することはなかったし、頭よさそうな雰囲気を出して『一人で学べる地学』やら『青木の地学基礎をはじめから丁寧に』を読んでいた眼鏡君たちも、スポーツ刈りのハンド部員の私より点数が低かったようです。

 余談ですが、試験会場で調子に乗っている奴が本物の賢い奴である可能性はかなり低いです。試験会場にいた400人超の中から20人が二次試験に進んだ某大学校の入試で、私が腹痛と戦う中トイレで問題の講評をしていたような人間は大抵二次試験に進みません。二次試験に進んだ私が見た限りいませんでした。センター試験でも、中堅高校の生徒はやけに群がって騒ぐ傾向にあるようです。なにが言いたいかはわかりますよね。

 本選は地学基礎にとどまらず発展した内容の問題が出題されるため、結果発表があった1月から3か月かけて基礎なしの地学を勉強しなければいけなくなりました。したがって、教科書を手に入れようと思って調べたところ、数研出版から一般向けに高校地学の教科書が出版されていました。それを手に入れて一から読み始め、本選の過去問を解きまくりました。ちょうどその時、学校の化学は有機化学の範囲をやっていました。しかし私はその時、朝昼晩地学漬けの生活を送っていたため、テスト前であったのにも関わらず化学を全くと言っていいほどやりませんでした。つまり、私の脳内には一度も有機化学の知識が定着したことがありません。なぜなら、また一から化学をやり直そうと思う前に地学に逃げることを選択したからです。

 本選の内容は悲惨すぎて書くことはありません。二人できた友達の片方とはのちに京大で再会することができました。

 筑波で行われた本選で惨敗した私を待ち受けていたのは、本選期間中に行われた大量の定期テストを1日で終わらせる鬼の所業でした。それを何とか乗り越え、ついに春です。

 3年で私は地学を選択しませんでした。

 

つづく