先日、久しぶりにUSJを訪れる機会があった。千葉県出身者の性からか、どうしても東京ディズニーリゾート(以下、ディズニーリゾートまたはTDR)と比較してしまうわけだが、以前訪れた時と同様に、やはり私の結論は「USJがディズニーリゾートを超えることはできない」だった。この「超える」は入園料のこと*1ではなくて、パーク全体としての完成度についてである。
以下、なぜ私がそう考えるに至ったのかを述べる。
①USJの評価すべき点
私はこれからUSJのダメな点を指摘していきたいわけだが、勿論たくさんの入場者がある以上、多少はいい点があるので、そのいくつかを挙げる。
1. 大規模アトラクションの質
USJには、長蛇の列ができそうな大型のアトラクションがいくつかあるが、そのうち、「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」、「フライング・ダイナソー」、「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」、「ジュラシックパーク・ザ・ライド(今回は休止中だったが)」の四つに関しては、乗ってる間については、大変満足度が高いと感じた。TDRにあるそれらと、アトラクション装置が人間に与える影響に関しては遜色ない、またはそれ以上だと思った。それぞれについての感想は割愛するが、ジュラシックパーク・ザ・ライドは開園当初からあるため、だいぶ老朽化しており、リニューアルしないのかな、と3年前に乗車した際に感じた*2。
2. 駅からの近さ
ユニバーサルシティ駅を降りてすぐ入口というのは大変に近い。その点は評価できると感じた。ただし、TDRもUSJに比べて入口が駅から遠いというわけではない。
3.ユニバーサルシティの店
USJの手前にある商店街、ユニバーサルシティには多くの店、特に飲食店があり、帰りに食べていける(ように見えるが、実際のところ閉園直後は混雑しすぎで行けたものではないところには目を瞑ってあげよう)。
②スパイダーマンとミニオンとマリオカートが一流アトラクション扱いされているが、そこまで楽しいものではない
ここについては大きな批判をもらうと思うが、私が上記のアトラクションに乗って得られた興奮は、TDRにおける「ロジャーラビットのカートゥーン・スピン」、「トイストーリー・マニア」程度であった。TDRにおいて、「スプラッシュマウンテン」より「ロジャーラビット」、「タワーオブテラー」より「トイストーリーマニア」だ、と正直に思う人は少ないだろう(スリルを伴うアトラクションが苦手なので~のような個人的な事情がある場合は別だが)。しかし、USJではそれらが長蛇の列を作っており、その列がさらなる列を呼び、列の長さがアトラクションの面白さの錯覚を生み出し、それが列の長さにつながり、と、負のスパイラルを生み出しているのではないだろうか。十歩譲って「スパイダーマン」は一流アトラクション、「マリオカート」は1.5流だとしよう。しかし、「ミニオンのハチャメチャライド」、彼に関しては、劣化版リニューアル前スターツアーズ*3としか言いようがない。
この楽しく無さの原因は、「スパイダーマン」に関して言えば、やはり映像に頼りすぎというところがあるだろう。スパイダーマンはライド型アトラクションでありながら、基本的にはスクリーンを見てそれに合わせてちょっと座席が動くタイプのアトラクションである。USJ若しくはUS側はこのようなタイプのアトラクションをユニバーサルスタジオらしいアトラクションだと誇ってそうだが、やはり没入感に欠けると思うのだ。客は実際に映画の中に入りたいわけだが、スパイダーマンのようなアトラクションだと、絶対に超えることのできないスクリーンという壁があるわけで、その点で、例えば「ロジャーラビットのカートゥーン・スピン」という、TDLのトゥーンタウンにある訳の分からないアトラクションは、訳の分からないオブジェクトがたくさん目の前に現れるわけで、否応なしにその世界に入り込んでしまうと思うのだ。
といいつつ、私は映像を使ったアトラクションは全く面白くないと思っているわけではなく、例えば上海ディズニーランドの「カリブの海賊-バトル・フォー・ザ・サンクン・トレジャー」などは、真昼間の大海原に浮かぶ船の動く様子や、ジャックとデイヴィの戦っている姿はさすがに実物で表現するのは難しいので、超特大のスクリーンや、オブジェクトに埋め込んだスクリーンにその映像を映しているわけだが、使い方が妙で、精巧に作りこまれたオブジェクトと見事に調和しており、素晴らしいアトラクションだと感じた*4。
つまるところ、スパイダーマンはちょっと映像が多すぎるのかな、と感じたのである。ただ、十歩譲ったら一流アトラクションだと認めることができるので、そこまで面白くないアトラクションだとは思わない。
ミニオンのアトラクションについても、同様のことが言える。円形のスクリーンにゆがんだ映像を映したからって没入感が上がるわけではない。
マリオカートについても、粗い映像が見えるだけで、あれだけ騒がれいてこれ?と思ってしまった。なんならキューラインのほうが面白いと感じた。
③ジョーズが信じられないくらい物足りない
ジョーズは開園当時からあるアトラクションで、TDRにしか行ったことの無かった幼き日から、「ジャングルクルーズみたいなの」があると思っていたのだが、今回初めて行ってみたところ、「ジャングルクルーズのパチモンみたいなの」であったことが分かった。
確かに、ジョーズにはジャングルクルーズにはない、炎が立ち上がる演出などがあるわけだが、如何せん、あまりに短い。船に乗っている時間は、ジャングルクルーズはおよそ9分*5、ジョーズはおよそ4分*6である。
同じようなアトラクションで、時間にして倍の違いがあれば、満足度に有意な差が出るのは言うまでもなかろう。まあ、ジョーズはあくまでビーチ周辺を航行するという設定なので、そこまで広くすることができない気もするが。
④ヨッシーアドベンチャーのようなアトラクションを作ろうとする気が知れない
初めてのスーパーニンテンドーワールドだったため、子供向けっぽいが乗ってみようと思って乗った「ヨッシーアドベンチャー」であったが、小学校低学年ですら満足できないアトラクションなのではないのだろうかと感じた。歩くのよりも遅いスピードで、スーパーマリオシリーズに登場するキャラクターたちのオブジェクトがちょこまか動いているのであるが、もともとニンテンドーワールド内にあるオブジェクトと大差なく、また、ヨッシーの卵を見つけたら手元にあるボタンを押して捕まえるという謎要素も、あまりに影が薄く、本当に5歳児まで専用のアトラクションになっているな、と感じた。
日本を代表する企業の任天堂が誇るマリオのキャラクターを作って大々的に売り出したスーパーニンテンドーワールドの2つあるアトラクションのうち、1つが就学前の子供専用のアトラクションなのである。用地の狭さもあっただろうが、ありきたりなコーヒーカップのようなものでよいから、ショボさを感じるようなアトラクションは作らなければよかったのに、と思った。
TDRにおいては、余った場所に作ったようなアトラクションでも十分楽しめるものになっていることが多い。魅惑のチキルーム(スティッチ登場以前は酷かったみたいな話だが...)や、タートルトーク、フライングカーペットなどは最たる例であろう。
しかし、USJの不思議なところは、こんなアトラクションにも、長蛇の列ができているのである。これについては後程考察する。
⑤スタッフ(クルー)をスベらせて共感性羞恥を感じさせるのがUSJならではの体験なのであろうか
USJの園内を歩いていて、スタッフ(クルー)とすれ違うと、頻繁に話しかけられる。もしも、キャラクターをモチーフにデザインされたカチューシャをつけている場合は、それについて指摘されるのだが、その突っ込みが「可愛いですね」くらいだといいのだが、ウケを狙った突っ込みをして、客、スタッフ双方が黙りこくる時間が流れるのを私は園内で何度も目にし、私はその沈黙の側で共感性羞恥に悶えるのであった。なお、私はカチューシャなどはつけないで怖い顔をしてスタッフに相対するので、そのようなシチュエーションの当事者になることはなかった。
おそらく、USJがスタッフに、客に積極的に話しかけて、非日常感を向上させなさいと教育しているのだろうが、どうも、その話しかけ方が、「関学生、阪大生が楽しい楽しいUSJバイトをしているなかで自分が楽しくなってしまって客に調子に乗って話しかけてる」感を感じさせるレベルの薄っぺらいものになってしまっている。
TDRのスタッフ(キャスト)が、どれだけ客に話しかけていたかは、もうしばらく行っていないので忘れたが、TDRに関するイメージの一つに、「キャストの教育がなっている」というものがあるのは確かである。そのイメージをUSJが解釈して具現化させたのが、大阪人らしからぬ、「スタッフによるスベり芸」なのであった。
まとめ:USJは大阪ルサンチマンランドに改名するべき
USJは、コロナ前は年間入場者数約1500万人で、入場者数で言えば、年間入場者数が両パーク合わせて約3000万人であるTDRに肉薄または比肩している。したがって、入場者数だけで見れば、USJとTDRは遊園地というくくりの中でほぼ同等の格と言えるだろう。しかし、ここまで述べてきたように、USJは細かく見れば見るほどTDRに比べて劣る点が目立つ。つまり、両パークで得られるサービスの質には圧倒的な差があるのにもかかわらず、入場者はほぼ同等なのである。
その理由は、端的には、地理的要因と言えるだろう。関東と関西の人口比は、国勢調査によるとだいたい2:1程度であった。*7関西と関東で「大規模テーマパークに行きたい」と思う人が同じ割合で発生すると考えれば、TDRとUSJの入場者数の比が上記のようになるのは納得できる。
しかし、「大規模テーマパークに行きたい」と書いたが、実際のところ、関西人も思っているのは、「TDRに行きたい」なのではなかろうか。つまり、関西人の「TDRに行きたい」という気持ちは、地理的要因から「大規模テーマパークに行きたい」にすり替えられ、それがまた、USJがTDRと質的にも肩を並べるものだと錯覚するに至らせる原因になっているのではないのであろうか。
私がそう考えたのは、先にも書いたが、ヨッシーアイランドに長蛇の列を作る人々と、その中にいたコスプレをした集団を見たときであった。ヨッシーアイランドは、前述の通り、大人が10分以上並ぶのが馬鹿らしくなるレベルのアトラクションであったが、私が訪れた日にはおよそ40分程度の列ができていた。私は初めてスーパーニンテンドーワールドに訪れたため、一度はすべてのアトラクションに乗ってみようと思って、事前情報無しに乗ったわけだが、その中で見かけた、きっと大阪府内の大学生たちであろう、ミニオンやその他ユニバーサル映画の登場キャラクターのコスプレをした人々は、きっとUSJが格安で売り叩いている年パスやらを持っている、また、持っていないにしろ、何度かUSJに訪れたことのあるものが多かったと想像され、そんな連中が、ガキでも楽しめるか微妙なアトラクションになぜか恥ずかしげもなく並んでいるのである。彼らはどういう気持でこのアトラクションに乗ったのか想像してみたが、どう考えても、USJの質、量的アトラクション不足に目を瞑って、ヨッシーアドベンチャーでも十分楽しむために敢えて、アトラクションに対して自分の求めるノルマを低く設定しているとしか考えられなかった。
なぜ、彼らはUSJに対して客側がサービスに譲歩するようなことをするのだろうか。私は以下の仮説を考えた。
関西になくて関東にしかないものの最たる例として挙げられるのは、TDRと霞ヶ関であろう。何なら、関西人はこれ以外は全部持っていると思っているかもしれない。だが、TDRがない、というのは、ひらかたパーク、ネスタリゾート神戸だけでは絶対に挽回することのできない決定的な関西のウィークポイントであった。そこに2001年ついに誕生したのが、USJであった。最初、関西人は歓喜したが、蓋を開けてみると少なすぎるアトラクション数、拭えないディズニーのパチモン感に唖然とし、一度は見捨てた。しかし、2010年頃、ゴールドマンサックスが介入するなどして復活を遂げようとするUSJに、関西人の人情がはたらいて、なんとかUSJを西のディズニーリゾートにしたい、すなわち「わしらもディズニーランド持ってるで!」的気持ちを持とうという機運が高まったのではなかろうか。それに呼応するように、フォービドゥン・ジャーニー、フライングダイナソーなどの、質的にも満足させるようなアトラクションが(2つだけだが)用意されたことも相まって、関西人は、完全に関東と並んだと錯覚したのである。
一度確立してしまった、多くの人間(関西人)の間で共有されてしまった概念をもう一度覆すことは難しい。まして、関西人にとって痛いところである「TDRがない」というコンプレックスを解消してくれた「USJはTDRと並ぶような存在である」という考え方を関西人が払拭できるはずがない。関西人はいくらUSJの本当の姿が、いつまでたってもTDRのパチモンであることがわかっても、ヒルナンデスとともに、いつまでもUSJを誇りに思い続けるのである。
この一連の関西人およびUSJの行動の理由は、「関東およびTDRへのルサンチマン」という言葉で説明できる。すなわち、USJはルサンチマンによって成り立っている、または、ルサンチマンをテーマにした、テーマパークなのである。
USJにスタジオ感は「バックドラフト」以外で感じられないし、大阪ルサンチマンランドに改名するのが、現USJをもっとも的確に表す名前であると、私は考える。
追記:私が最も好きなUSJのアトラクション
は、ウォーターワールドである。最後飛行機飛んでくるの面白い。
*1:2022年3月9日現在、いずれも変動価格制を導入しているが、大人料金が、USJが最高8900円なのに対し、TDRは9400円である。私がよく行った小学生時代は大人料金6000円程度であったのが懐かしい。また、これにはUSJが息を吹き返した2011年ごろから徐々に入園料を引き上げて、それに追随する形でTDRが入園料を引き上げて、しまいにはTDRがUSJを追い抜いてしまったという経緯がある。
*2:なお、ハリウッドのユニバーサル・スタジオには、映画「ジュラシックワールド」をモチーフにしたジュラシック・ワールド・ザ・ライドがある。実際に乗っている動画↓
[NEW] JURASSIC WORLD The Ride! New INDOMINUS REX! | Universal Studios Hollywood 2021! - YouTube
*3:TDLのアトラクション、スターツアーズは2013年にリニューアルしている。その前はC-3POやR2-D2の存在しない、謎のロボットが運転する宇宙船に乗るアトラクションだった。なお、私はスターウォーズを見たことはない。
*4:なお、私は実際に上海ディズニーランドに行ったわけではない。
[4K] Immersive Pirates Ride at Shanghai Disneyland - Amazing Ride Technology - YouTube
また、フロリダのディズニーに最近できたらしいスターウォーズのアトラクションもかなりヤバい。
[4K] Immersive Pirates Ride at Shanghai Disneyland - Amazing Ride Technology - YouTube
*6:🔴USJ ジョーズ / JAWS Ride at Osaka Universal Studios Japan - YouTube