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生きる教訓...

【国総】不合格者が語る国家公務員総合職「教養区分」合格の方法

 今年も国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)「教養区分」(以下、教養区分)の季節がやってきました。例年、倍率15倍くらいの高倍率で、マーク型の一次試験は「ガチャ」とも言われているそうです。私も昨年度この教養区分を受験し、無事(一次)合格をいただき、あとは2倍に届かないくらいの低倍率の二次試験を勝ち抜けば、国家公務員総合職になる資格を得られるはずだったのですが、面接試験で「野球部時代、する意味が分からなかったので自分だけ坊主にしていなかった」みたいなことをむしろアピールポイントだと思って話していたら、国家の犬には向いてないと判断されたそうで、A~Eの5段階評価(Eが一番下で問答無用で不合格になる)でE評価を賜り不合格になりました。

 どうやら、二次試験の適正は全くなかったのですが、一次試験は1か月ちょっと勉強したら軽く合格できたので、どのようにして勉強したかを、未来の受験者の参考にしてもらうために共有します。

1.初期状態

 こういう勉強法の類は、受験勉強含め、この世に氾濫していますが、その人がもともとどの程度できたかが書いてないと、自分の場合に生かそうとしても合わない場合が多いんじゃないでしょうか。そこで、私の勉強を始める前の状態を書いておきます。

  • 京都大学理系学部3回生
  • 受験生の時、国語もそこそこできた
  • TOEICスコア915
  • 暗記は苦ではないが、そんなにできない
  • 公務員予備校には通っていない
  • (面接対策なんてする人間はアホだと思っている)

 公務員試験に影響してくる要素はこのぐらいだと思います。ここから自分の要素を足し引きして、以下を読んでもらえばいいと思います。

2.どうやって勉強を進めたか(スケジュール)

半年前

 最初の文章で1か月ちょいの勉強で(一次)合格した、と書きましたが、実のところ、半年くらい前に行動は起こしており、加点(下図)があるためTOEICを受験しました。

公務員試験における外部英語試験の加点
人事院「国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)『教養区分』受験案内より)

 上図のとおり、25点加点のなかでTOEIC730点がずば抜けて簡単です。また、TOEICはリスニングとリーディングしかないのに*1、スピーキングとライティングもあるTOEFLと同じ扱いなのが意味不明です。人事院は何を考えているのでしょうか。そもそも、TOEICの点数なんぞで英語力が評価される日本社会全体が異常だと思います。人事院が率先して変えていけばいいのに。

 いろいろ言いたいことはありますが、ここは人事院の意欲ある(?)受験者へのサービスだと考えて、TOEIC730点以上を軽く取っておきましょう。私はもともとセンター英語は10分くらい時間が余ってほぼ満点の英語力(リーディング力)を持っていたので、英語がもともと不得意の人は参考にならないかもしれませんが、東進ブックスから出てる、安河内哲也の「レベル別問題集 860点突破」を20日くらいかけて一通りやったら、860点突き抜けて910点くらいとってしまいました。主としてリスニング力の強化のために勉強しており、リーディングについては大学受験レベルの力があればほぼ対策はいらないと思います。 

TOEIC L&Rテスト レベル別問題集 860点突破 (東進ブックス レベル別問題集) | Craig Brantley, 安河内 哲也 |本 | 通販 | Amazon

  また、大学受験レベルの英単語力がない人については知りませんが、巷にあるTOEICの単語帳(?)のようなものをやる意味は、少なくとも、まともな大学入試で英語の点数をある程度とれた人間なら全くないと思います。時間の無駄です。単語力を上げたいと思っている人でも、へんなみためのTOEIC用の単語帳みたいなものよりは、普通の大学受験用か学術英語用の単語帳でもやったほうがいいんじゃないですかね。ちなみに私のおすすめは問題演習で出てきた知らない単語を覚える、です。

 こうして、半年くらい前に25点は確保しておくと後々ちょっと気が楽になります。25点の加点はかなり大きいです。

 

夏休み中~本番

 その後、8月の半ばまではほぼ何もしていませんでした。たしか、お盆が明けたころから、Twitterで公務員試験を応援するタイプの学生団体が対策の情報を共有し始めたので、私も危機感を覚え、教養試験の過去問題集(国家総合職 教養試験 過去問500 2023年度 (公務員試験 合格の500シリーズ1) | 資格試験研究会編 |本 | 通販 | Amazon)を買いました。

 一応説明しておきますが、例年秋に行われる「教養区分」では、一次試験に「総合論文試験」「基礎能力試験(Ⅰ・Ⅱ)」の計三つの試験が課され、基礎能力試験の点数のみが一次試験の突破にかかわります(総合論文は一次試験でやるくせに最終合格にしか絡んでこない)。

 だから、教養区分を受ける人は、基礎能力試験の過去問が欲しいのですが、残念ながらそれは一般には出回っていない*2ので、人事院にいくらかで請求して何年分かの過去問を貰うか、春に行われるほうの公務員試験の教養試験(教養区分の基礎能力試験と問題数は異なるが内容はほぼ同じ)の過去問題集を活用するしかないのです。

 そのような事情もあって、私は春の試験の教養試験の問題集を活用しました。ですが、本番の試験一か月前で過去問は二十年分くらいあって、全部は解けるはずがないので、一部の科目に絞って解くことにしました。解いた科目は以下。

  • 数的処理
  • 資料解釈
  • 理科(物理・地学)
  • 社会(地理・思想)

 数的処理は対策なしでは本番で解くことは不可能なので解きました。資料解釈はかなり慣れが必要と感じたので解きました。理科は受験生の時の選択科目だから、社会は上に述べた公務員試験を応援するタイプの学生団体の記事に、地理と思想(倫理)は簡単だと書かれていたので解きました。

 上の四つのうち、地理と思想だけは過去問を解く前に参考書と高校時代の教科書(倫理)で勉強しました。

 数的処理や資料解釈も巷には参考書がたくさんあると思いますが、簡単すぎるので*3、当たって砕けろで、本番の難しい問題を頭をフル回転させて頑張って解いたほうが力がつくと思います。また、教養区分の数的処理は春に比べて難しいなんて話も聞きますが、私はそのようには感じなかったです。

 理科は受験生の時の記憶があったら解きましょう、忘れているのなら今更勉強しても無駄です。

 その他の科目(英語、現代文)などは解く意味はあまり感じられませんでした。英語はTOEICのスキルがあればほぼ間違えることはないし、現代文については義務教育、大学受験でさんざん文章を読まされていたはずの大学三回生がいまさら読解力を上げようとしたって無理だと思うので、本番での自分の日本語力を信じるしかありません。

 一ヶ月あれば、上の科目をそれぞれ一周解いたらよほど暇な人でない限りちょうど試験本番になっていると思います。解ききってしまったら、別の科目を解くのではなくもう一度数的を解いたほうがいいでしょう。

3.本番の戦略

 さて、こうして当日を迎えるわけですが、ここまで勉強していても、戦略もなしに試験に臨んでは努力が水の泡です。教養区分はとんでもなく時間が足りないのです。

 当日の午前中にある論文試験は4時間で、2つの文章を作成しますが、これについては普通に書けばちょうど2時間ずつで時間が足りなくなるようなことはないと思います。

 午後一発目にある基礎能力試験I部がかなりシビアです。試験時間は2時間で、問題数は全24問なので、1問あたり五分で解かなければなりません。24問の内訳は、現代文3問、英語5問、数的処理14問(判断推理6問、数的推理8問)*4、資料解釈2問です。

 現代文や英語はA4の3分の2くらいの長さの文章なので、簡単な文章であれば3分もあればすぐに選択肢を選べると思いますが、ちょっと難解な文章だと5分オーバーしてしまうかもしれません。

 数的処理は、数学っぽいほう(数的推理)は割に簡単に解ける問題も多いと思いますが、パズルっぽいほう(判断推理)は6問中最低でも1問はこんなん解けるかいな、という問題があります。

 資料解釈はグラフの読み取りで、死ぬ気で筆算すれば答えは出ますが、そんなことをしたら余裕で5分以上はかかるので、如何に概算と、選択肢から逆算して最短経路で計算を行うかが重要です。コツを掴めば簡単。

 過去問を解いていた時点でこの傾向は掴めていたので、試験を受ける前から以下のような順番で解こうと決めていました。

 

現代文→英語→資料解釈→数的推理(数学っぽい方)→判断推理(パズルっぽい方)

 

 この順番にした理由は、単純に得点し易い順です。散々過去問を解いて、判断推理については、絶対に自分では解けない問題もあるわけで、それならば、最後の残った時間で、解けそうな問題を選んで解いたほうがいいだろうというふうに考えました。

 

 基礎能力試験Ⅱ部(知識分野)は、試験時間は1時間半で、問題数は30問ですが、全問知識問題なので、めちゃくちゃ時間が余ります。すなわち、最初の40分くらいですべてマークし終えてしまい、あとは一度も勉強せず適当にマークをした問題について知らない単語の意味を推測してやっぱりこっちかな、と選択肢をちょこまか変える不毛な時間が流れます(変えた選択肢もどうせ合ってない)。こっちについては対策もクソもないでしょう。

4.結果

 本番を終えたあとの手応えはそこそこで、帰りに梅田で何かを食べて帰りました。

 翌日、人事院ホームページに解答が掲載され、自己採点をしてみたところ、以下の点数でした(後々開示を見ても合ってました)。

  • 基礎能力試験Ⅰ部・・・20/24
  • 基礎能力試験Ⅱ部・・・17/30

 合格ラインは年によって異なるし、標準偏差を計算して点数をだしたりするのでたいへんややこしいのですが、どうやら過去数年の合格ラインは突破できているようでした。たしか、計算すると、基礎能力試験Ⅰ部の1問が、基礎能力Ⅱ部の2問分に相当するというような話なので、Ⅰ部でこれだけ取れていれば全く問題はなかったです。

 Ⅰ部の正誤の内訳は、現代文と英語と資料解釈は全部正解で、数的処理で4問落としました。

 作文の点数は忘れましたが(開示のPDF保存し忘れた)、平均点くらいでした。

5.二次試験

 さて、自己採点がこんなに良い点数であったので、二次試験に向けて対策をしなくてはならなくなってしまいました。すでに述べているように、私は二次試験で不合格となったので、信用ならないかもしれませんが、一応何をしたか述べておきます。

 二次試験は企画提案試験(プレゼン)と政策課題討議試験(グループディスカッション)と人物試験(面接)に分かれています。

  • 企画提案試験

 企画提案試験は、試験当日に、資料を何個か与えられて、それをもとに役人の立場からどういう政策を取れるか、という論文を1時間半で作成し、それを試験官の前で発表して質疑応答を受けるという試験でした。

 当日に資料は何個か渡されますが、一次試験の合格発表のときに、企画提案試験での出題内容に関連のある省庁発行の文書が指定される(〇〇白書など)ので*5、それに目を通しておくといいと思いますが、おそらく当日にその内容を思い出すことはないです。すなわち見なくてもOK。

 実際のプレゼンテーションですが、弁論部みたいな団体に所属していない限り、みんなできないと思います。私は京僚会という関西の国家公務員志望者を支援する団体が企画していた対策会に一度参加しましたが、もちろん良い指導をしていただいたのですが、当日にその成果が発揮できたとは思いませんでした。される質問の内容が「予算はどこから出すの?」など、結構リアリスティックなことで、官僚でなはい自分は、実際の現場がどうなっているかなんてわかりようがないので、こんなもの答えられるわけがないと思いました。最後は「ご指摘のとおりだと思います」を連呼して終了したのを覚えています。でも評価はちょうど真ん中のCでした。多分ほとんどC評価でしょう。

  • 政策課題討議試験

 これは、俗にいう「グループディスカッション」と呼ばれるものですが、一般企業のしょうもないインターンの選考などで行われているものとはちょっと違っていて、これまた事前に資料を渡されて、白紙に20分程度で資料を作成してそのご6人一組になってディスカッションをするという内容でした。民間企業の就活をしている友人に「え!官僚もGDあるんだ!」みたいなことを言われましたが、そんな「ぢーでぃー」よりはもうちょっと格式張ったものだと勝手に思っております。

 ですが、この試験も、~について討論せよ、と言われるわけですが、渡される資料から得られる情報が少なすぎて、タラレバで話すほかなく、一応、「グループ内で意見がまとまったら早めに切り上げても大丈夫です」という指示があるのですが、こんな少ない情報量で意見がまとまっては、逆に国家公務員としてどうなの!?というような感じでした。

 この政策課題討議試験は、二次試験の最後にあるので、試験が終わったあとは解散になるのですが、帰りはグループのメンバーと話しながら帰れるのでとても楽しかったです。唯一そこはいいなと思いました。また、私のグループは6人中5人が京大生だったのが発覚して面白かったです。他のみなさんも元気にしていますか...(連絡先等だれとも交換していない)

 評価はC評価でした。あまり喋れなかったけど。

  • 人物試験

 「お前はこれで最低評価をもらって落ちたんだからこれについて書くなよ」と言われそうですが、教養区分の次の春の数学・物理学・地球科学区分で見事人物試験でB判定をもらい、合格しているので、何がだめだったかがわかるから、これから書く内容はめちゃくちゃためになりますよ。

 人物試験は面接カードという、学生時代に行ったこと、とか自分のどのような性質が公務員に向いていると思うか、みたいな内容を自由に記述するカードを事前に記入し、当日に提出して、それをもとに面接を行います。試験官はまじで面接カードだけから質問してくるので、適当なことを迂闊に書いてしまうと、喋れなくて詰みます。気をつけてください。

 教養区分のときと、数学・物理学・地球科学区分のときで何が違っていたかというと、前者では自分の思想を全面に出していって、「ありのままの私を評価して~」ぐらいの気持ちで試験に望んだのですが、後者では「私の中身をのぞかないで~」という気持ちで、つまり、自分をめちゃくちゃ取り繕っていい子ちゃんになった気持ちで試験に臨みました。

 官僚は自分の意見を出してはいけないのです。犬にならなければなりません。そのことに気づき、二回目の面接では高評価をもらうことができました。

 まあ、普通の人間が普通に受け答えしてたらC評価はつくと思います。私は諸々の事情で尖っているところがあるので。そこが露呈してしまってアウトだったのだと思います。

 

 ちなみに、二次試験は、もしも人物試験で下から二番目のD評価以上が付けばTOEIC25点の加点込みで受かっていました。だから、全部変に狙いにいかないで、普通の人間として受け答えすれば、二次試験の心配はいらないと思います。

 

6.まとめ

 以上から言えることは、

  • TOEIC730点以上を確保する。
  • 基礎能力試験Ⅰ部での高得点を狙う(Ⅱ部は正直どうでもいい、たぶん15点はとれる)
  • プレゼンとディスカッションは、普通に話せればOK、みんなできないから。
  • 面接では国家の犬になる気概をみせること

 これらができれば、教養区分合格は容易いということです。

 大学三回生のうちに、教養区分に合格して、あとはのんびり民間就活をするなどするのが、理想ですね。がんばってください。

 

*1:TOEIC S&Wというスピーキングとライティングの試験もあることは知っている

*2:公務員予備校では過去五年分くらいもらえるらしいが、そのために30万円を払うのはアホらしい

*3:高校時代に気象大学校受験のために買った数的処理の本をちょっとだけ解いたが、あまり力がついた感覚はなかった

*4:この辺の違いは私もよくわかっていない。パズルっぽいやつが判断推理で、ほぼ数学が数的推理

*5:私のときは、指定されていたリンクが切れていて、資料の名前をググって探すという手間をふまなければならなかった。官僚の仕事ってこの程度のものなのか、と思った